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Mrs. Little December

なにか考えたり、なにか読んだり、どこかに行ったり。

すべてを魔法のように解決してくれる! シルバー・バレットは存在しない

書評 考えたこと 自己啓発

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うつ病に悩んでいると、もし朝起きて、すべての症状が和らいでいたら…と思わざるを得ないことが多い。それだけではなく、たとえうつ病でなくても、「これさえ手に入ればすべてが魔法のようにうまくいく!」と思われる本や製品、モノというのは誰もが一度は夢見ることだと思う。そういうモノのことを、海外では「シルバー・バレット(銀の弾丸)」と呼ぶ。狼男や魔物を退治する際、銀の弾丸でなければ彼らを仕留めることはできないとされていることに由来する。

 

しかしそんなものは存在しない。これは夫の口癖でもあり、わたしが未だ理解に苦しんでいることでもある。明日目が覚めたら、とは言わず、今この瞬間から、「自分を変えてくれる」本や製品がないだろうか。もっと大きな家に住めば、もっとお金を自由に使えたら、うつ病にならないかもしれない、そう思ってしまう。しかし残念ながらそんなモノはないし、「人生を変えた一冊」とか、「人生の転機」というのは大抵がマユツバもので、何かのきっかけで人生が変わったらしい人が、自己の人生を振り返って「あの一瞬がすべてのはじまりだった」とドラマチックに語っているに過ぎない。

 

つまるところ、シルバー・バレットが存在しない以上、我々は努力するしかないのである。人生を変えるためには、自分を変えるためには、毎日コツコツと何か積み上げていくこと、それしか方法はないのだ。『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』にも再三書かれているように、オリンピックの選手やノーベル賞の科学者は、ある日突然素晴らしいパフォーマンスが出来るようになったわけではない。彼らは小さな努力を毎日毎日積み重ね、何十年という時を経てようやくスターダムにのし上がるのである。

 

結局、うつ病であるにしろないにしろ、自分を変えるためには努力が必要だ。目標を立て、それを小さな目標に分け、それをさらに細分化し、そして毎日実行可能なタスクに落とし込んでいく。言うのは容易いことだが、物事の仕組みというのはシンプルマニアの夫が小躍りするぐらいにシンプルで、「やるか」「やらないか」、この一点に尽きるのだった。

 

ただし、無我夢中で何に対しても100%の力を発揮して努力するべきだというのとは話が違う。目標も掲げずにただ勉強するのでは、『やり抜く力』にあった『意図的な練習』にはならない。『やり抜く力』によると、意図的な練習とは、

 

1. ある一点に的を絞って、高めの目標を設定する。

2. しっかりと集中して、努力を惜しまずに、目標の達成を目指す。

3. 改善すべき点がわかったあとは、うまくできるまで何度も繰り返し練習する。

 

の3点を盛り込んだ練習のことを言う。何かをやろうと決めたならば、そこに目標は必要不可欠だ。たとえば「うつ病を治す」ということでも、「昇進する」ということでも、それを「しっかり通院をする」とか、「商談の成功率を◯◯%にする」とかいう中目標に落とし込み、それをさらに「薬を用法用量を守って毎日欠かさずに飲む」とか、「取引の場に遅れないように30分前に行動する」とか、どんどん具体的な目標をひねり出していくのだ。実は、何かを実行するより、計画を立てる段階のほうが難しいと思う人が多いかもしれない。実際、いざ「あなたの目標はなんですか?」と聞かれたところで、数秒ポカンとしてしまうくらい、目標を立てずに生きている人が大多数だからだ。

 

そういうわけで、シルバー・バレットは存在しないが、存在しないからといって自分が変われない言い訳にはならない。シルバー・バレットの代わりに、我々は普通の弾で、射撃場で、的の真ん中を射抜けるように日々努力していくしかないのである。