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Mrs. Little December

なにか考えたり、なにか読んだり、どこかに行ったり。

(1)「遺伝」と「環境」と「無知」――わたしがうつ病になった原因

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記事のなかでも何度か書いている通り、わたしはうつ病パニック障害を患っている。そう診断されたのは20歳のときだったが、うつ状態をはじめて経験したのは16歳のころだった。当時わたしは親の都合でイギリスのとある小さな村に住んでいて、近くの高校に通っていた。アジア人はおろか、イギリス人ではない人種を見かけることもない片田舎だった。その頃は英語を喋ることもできず、当然友達など出来るわけもなく、次第に不登校になっていったのだが、わたしはこれまでずっと、自分のうつ病の起源をその体験に求めていた。つらい体験だったから、それがわたしをうつ病にしたのだと思った。

 
うつ病は遺伝的な病気である

 

しかし、うつ病が発症したのは、つらい体験が原因ではなかった。うつ病とは、遺伝的な病気なのだ。ブライアン・P・クインによる『「うつ」と「躁」の教科書』 には、この証明として以下のような科学的根拠が挙げられている。

 

まったく同じ遺伝子をもつ一卵性双生児で別々に育てられた2人のうち、一方がうつ病になったとすると、もうひとりもうつ病になる確率は一般の発病率よりも高い。

実の親や親類にうつ病患者をもつ子どもは、うつ病でない養親に育てられたとしても、うつ病になる確率が一般の発症率よりも高い。

 

これらの根拠を体現するかのように、わたしの兄弟は全員何かしらの精神疾患を患っている。母も健康的な精神の持ち主だとは言い難く、パニック発作を何度か経験したことがあるくらいだ。つまりうつ病は、癌が遺伝するかのように脳機能障害として受け継がれるものであり、決して自分が打たれ弱いから、といったような茫漠な原因が元になっているわけではないのだ。

 
うつ病の育て方

 

とはいえ、うつ病が遺伝的なものである限り、うつ病患者の血縁の養育者も何かしらの問題を抱えていることが多い。たとえばわたしのケースでは消極性の女王とも言うべき母の存在が少なからず後年のうつ病の発症を手伝った節がある。母はうつ病でこそないが、非常にネガティブな思想の持ち主で、常に人生の不幸を嘆いては具体的にはなにも対処をしない女性だった。必然的にわたしもすべてのことがらについて一定の無力感を持つ大人に成長し、親元を離れるまでその異常なまでの消極性には気づくことがないくらい、自分も悲観主義者だった。前述のクインも、遺伝的にうつ病になりやすい子どもが、なんらかの精神的問題を抱えた家庭で育つと、うつ病を発症する確率はさらに高くなると述べている。この点においても、うつ病というのは発症した人間のせいではない。誰にも親は選べないのだ。

 
うつ病について学ぼう

 

さて、ここまでうつ病がいかに「自分のせい」ではないかを語ってきたが、最後は自身の努力でどうとでもなるポイントになる。わたしは16歳のころから一定の抑うつ症状に悩まされてきたが、「病院に行くほどのことではない」と一度取った精神科の予約を取り消したことがあるし、真面目に投薬治療を始めたのもつい1年ほど前のことだ。これがいけない。一旦うつ病を発症したのなら、うつ病について積極的に学ぶ姿勢は大変重要である。なぜならメディアや口伝で伝わっているうつ病についての情報――うつ病は甘えだとか、うつ病はすぐに治るとか――は間違っていることばかりだからだ。うつ病を発症したばかりのころは、たしかに本を読むのも、そしてそもそも本屋に行くことすら困難な日々が続くが、少しでも余裕があるのなら、その余裕はうつ病についての学習に使うべきである。わたしもうつ病は抑え込むものであって、治るものではないと思っていたし、抗うつ薬にはなんの信頼もなく、最終的には「自分は病気ではないのかもしれない」という疑念を抱くほどだった。うつ病は甘えでも、すぐに治る病気でもない。ほかのどんな病気よりも、患者自身が自分の病気を理解することが、治療への近道となる。だからわたしは今でも16歳のころに精神科へ向かわなかったことを非常に後悔している。

 

それでもうつ病はあなたが悪いから、ダメ人間だから、あるいは弱いから発症したのではない。うつ病は立派な脳機能障害であり、遺伝で受け継がれるものであり、そして治療すればどうにかなるものだ。あなたが今うつ病であることに悩んでいて、解決策を探しているのであれば、まず自身の病気について知識をつけることをおすすめしたい。そうすれば、向かうべき方向が自ずと分かるからだ。

 

(2)に続く